社会人生活を送りながら自身の身体と心の調和を求めた能町氏は、本格的な移行プロセスへと進みます。ホルモン治療を経て、海外にて性別適合手術を受ける決断を下しました。
手術後は日本国内の法制度(性同一性障害特例法)の要件を満たした上で、家庭裁判所に申し立てを行い、戸籍上の性別を「女性」へと正式に変更しています。この一連のプロセスは単なる肉体的な変化にとどまらず、社会的な身分と自己のアイデンティティを一致させるための重要な法的ステップでした。
能町氏はこの経験について、過度に感傷的・悲劇的に語るのではなく、医療や行政手続きの現実的な煩雑さや日常の感覚を冷静な筆致でエッセイに書き残しています。そのフラットな語り口は、同じ悩みを抱える当事者だけでなく、多くの読者にジェンダー問題を身近に考えるきっかけを与えました。