圧巻の滑走劇の一方で、欧州や北米の主要メディアが色めき立ったのはウォームアップエリアで起きた「ある異変」だった。直前の公式練習中、一部有力選手のブレード調整やエッジのフィーリングをめぐり、コーチ陣が激しく議論を交わす場面が複数目撃されていたのだ。
国際スケート連盟(ISU)のテクニカルパネルが今大会で採用した極めてシビアな回転不足の判定基準に対し、各陣営のピリピリとした警戒感は演技直前まで続いていた。キス&クライに座った坂本陣営でさえ、得点が表示される直前の一瞬、張り詰めた沈黙が流れた。結果発表の瞬間に弾けた歓喜の涙は、氷のコンディションやジャッジ傾向に対する極限の重圧から解き放たれた証拠だろう。