皇室周辺における落胤伝説もまた、日本の近現代史において最もデリケートな領域であり続けている。宮内庁が厳重に保管する非公開の古記録群のなかに、明治維新前後の動乱期に存在したとされる「幻の宮家」や皇族の子息たちに関する秘録が存在することは、歴史研究者の間でも公然の秘密だ。
旧華族の家に代々受け継がれてきた私家版の家系図を紐解くと、公的な系図では断絶したはずの血脈が、養子や庶子という形で脈々と受け継がれているケースに突き当たる。幕末から明治への大転換期、朝廷や公家社会は激変の波に晒された。その混乱の中で、表沙汰にできない高貴な血統を地方へ逃がし、密かに守り抜いた一族が少なからず存在した。
こうした古文書群の調査が進むにつれ、神話化されていた近代皇室の周縁に、人間味に満ちた、そしてときに残酷な血のドラマが存在していた事実が浮かび上がってくる。