乗用車市場において確固たる地位を築いたディーゼルですが、日本の新車販売の約4割を占める軽自動車には搭載モデルが一切存在しません。これには明確な物理的・経済的理由が存在します。
第一の理由は、重量とコストの肥大化です。ディーゼルエンジンは高圧縮比による強大な筒内圧力に耐えるため、エンジンブロックの肉厚化や高強度パーツの採用が避けられず、ガソリンエンジンに比べて本体重量が数十kg重くなります。車両重量が軽いことが絶対的なアドバンテージである軽自動車において、この重量増は運動性能やタイヤへの負荷を高める大きなデメリットとなります。
第二の理由は、浄化装置のパッケージングと価格設定の限界です。現代の厳しい排ガス規制をクリアするためには、DPFや高精度コモンレールシステムなどの高額な補機類が必須です。これらを660ccの小さなエンジンルームに収めることはレイアウト上極めて困難であり、仮に搭載できたとしても車両価格が数百万円規模に跳ね上がってしまいます。低廉な移動手段という軽自動車本来の経済的価値を著しく損ねるため、主要自動車メーカーはいずれも軽ディーゼル乗用車の開発を見送っています。