遠野なぎこが実母から受けていた凄絶な虐待の実態は、2014年に上梓された自伝『一度だけ』およびその後のメディア告白によって白日の下に晒されました。小学校低学年の頃から子役として活動していた彼女にとって、家庭は安らぎの場ではなく、いつ暴力や罵声が飛んでくるか分からない極限の戦場でした。
手記やインタビューで明かされた事実は凄惨を極めます。日常的な平手打ちや蹴打といった身体的暴力にとどまらず、母の機嫌一つで激しい言葉の刃が浴びせられました。特に深刻な傷を残したのが、女優としての容姿管理を名目にした母からの体型批判です。わずか10代前半の多感な時期に「太っていると仕事がなくなる」「吐いてでも痩せなさい」と強要され、指を喉に突っ込んで吐く行為を強制されたことが、その後30年以上にわたり彼女を苦しめ続ける摂食障害の決定的な原因となりました。
母親にとって娘は、自らの承認欲求と経済的欲望を満たすための「所有物」であり、自己表現の道具に過ぎませんでした。子役として得たギャランティの管理権を完全に掌握され、人格を否定され続けた結果、彼女の心には「母の期待に応えられなければ自分には生きる価値がない」という強固なトラウマが刻み込まれることになったのです。