この悲哀に満ちた歴史の裏舞台には、男装の麗人として知られる川島芳子の暗躍もあった。清朝皇族の血を引きながら日本の密偵として動いた川島芳子は、婉容を天津から満州へと連れ出す工作に関与したとされる。二人の複雑な関係性は、当時の怪しい宮廷政治の縮図でもあった。
近年、当時の医師の診断記録や秘蔵史料の分析によって、婉容の阿片依存の衝撃の真相が浮き彫りになってきた。当初は腹痛や月経痛を和らげる治療目的で処方されていた阿片が、日常的なストレスや絶望感と結びつき、重度の依存症へと発展した事実が判明している。さらに、宮廷内の従者との間にできたとされる子供が生まれてすぐに取り上げられ処分されたという衝撃的な事件が、彼女の精神を完全に崩壊させた決定打であったことが史料調査から裏付けられている。