作者・冨樫義博の真骨頂は、少年漫画の王道テンプレートをことごとく解体し、残酷な現実を突きつける点にある。一般的なバトル漫画であれば、主要キャラクターはどんな強敵を前にしても気合で立ち向かうのが定石だ。しかし、冨樫はその安易な展開を許さない。
ダークファンタジーとしてのリアリズムを追求する中で描かれた「ノブの心折れ」は、敵の強大さを際立たせると同時に、人間という生き物の脆さを浮き彫りにした。壊れた人間が無理に前線に復帰して奇跡を起こすのではなく、壊れたなりの役割を果たす。この冷徹で誠実な人間描写こそが、本作を不朽の名作たらしめている要因だ。