王騎軍の精鋭を蹴散らし、趙国きっての破壊神として読者を戦慄させた渉孟。しかし、その最期はあまりにも呆気なく、そして劇的でした。死亡シーンが描かれたのは、単行本第14巻(第146話「武運」)、アニメでは第1シリーズ第33話「王騎 出陣!」です。
戦局を動かすべく自ら前線へと出陣した天下の大将軍・王騎。その圧倒的なオーラを前に趙兵が恐慌をきたすなか、渉孟だけは不敵な笑みを浮かべました。彼は王騎を「過去の遺物」「名声ばかりが先行した旧時代の象徴」と見下し、自身の武名を中華全土に轟かせる格好の獲物と捉えたのです。自慢の「破壊球」の全体重を乗せ、三日月矛を振りかざして王騎めがけて一直線に突進しました。
しかし、交差した刹那、王騎が繰り出したのは、無駄の一切ない大矛の薙ぎ払い一閃でした。激突の瞬間、渉孟の分厚い肉体は鎧ごと横一文字に両断され、言葉を発する間もなく絶命したのです。
なぜ、鱗坊を圧したほどの猛将が文字通り「秒殺」されてしまったのか。現場の描写を構造的に分析すると、以下の3つの決定的要因が浮かび上がります。
第1に、「間合いと初速の絶対的な差」です。渉孟は自身の質量による破壊力を信じるあまり、直線的な突進しか選択肢を持っていませんでした。対する王騎は、数々の死線をくぐり抜けて磨き上げられた完璧な間合いの把握と、巨躯からは想像もつかない神速の太刀筋を持っていたため、渉孟の太刀筋が届く遥か手前で勝負が決していました。
第2に、「背負うものの重み(将軍の見る景色)の違い」です。王騎が背負っていたのは、昭王と共に中華を駆け抜けた何万人もの戦友たちの命と魂、そして中華統一という果てしない大志でした。個人の名誉欲や腕自慢だけで突進してきた渉孟とは、一撃に込められた「重さ」の次元が根底から異なっていたのです。
第3に、「情報戦と格付けの誤認」です。渉孟は長年、趙の国内戦や小規模な紛争で無敗を誇っていたため、かつての中華最強クラスである「秦の六大将軍」の実力を肌感覚で理解できていませんでした。この致命的な過信が、防御を捨てた無謀な突撃へと彼を駆り立てたといえます。