メディア論および現代カルチャー研究の観点から2021年のガンダム動向を総括すると、それは「昭和・平成的オイディプス神話の解体」と「多様化する自己決定へのパラダイムシフト」でした。
かつての宇宙世紀シリーズは、父と子の確執、アムロとシャアという巨大な男たちの因縁、背負わされた大義の重圧といった「父権的な呪縛」が通奏低音として流れていました。『閃光のハサウェイ』はその呪縛に抗い、テロリズムという極限状態に追い込まれる青年の悲哀を描き切った、旧来型カノン(正史)の総決算です。
対照的に、同年に発表された『水星の魔女』では、親の復讐や企業の思惑に翻弄されながらも、主人公スレッタ・マーキュリーとミオリネ・レンブランが「自分の手で選び取る未来」を志向しました。心理学で言われる「共依存関係からの脱却」と「健全な心理的バウンダリー(境界線)の確立」がテーマの根底に据えられたことで、親世代の価値観に息苦しさを抱くZ世代の若者たちの共感を完璧に捉えたのです。
【プロの判断基準】今どの作品から触れるべきか?向いている人・おすすめできない人
2021年を起点とする作品群は、アプローチによって楽しみ方が大きく異なります。ミスマッチを防ぐための鑑賞判断基準は以下の通りです。
▼『閃光のハサウェイ』が向いている人
・ミリタリー描写、現実的な兵器の質感、硬派なサスペンスを好む人
・『機動戦士ガンダム(ファースト)』『逆襲のシャア』を履修済みで、宇宙世紀の歴史的結末を見届けたい人
・映画館レベルの圧倒的な音響と映像美に浸りたい人
※逆におすすめできない人:痛快な勧善懲悪や、分かりやすいハッピーエンド、テンポの速いギャグ要素を求める人。
▼『水星の魔女』が向いている人
・これまでのガンダムを一切見たことがなく、予備知識ゼロから最新作を楽しみたい人
・魅力的なキャラクター同士の関係性(百合、バディ、学園劇)やSNSでの考察を好む人
・スタイリッシュなメカデザインとテンポの良い戦闘シーンを体感したい人
※逆におすすめできない人:重厚なミリタリー政治劇や、泥臭い泥沼の艦隊戦のみを至高とする人。