スーパーで購入したアラをそのまま鍋に投入し、出来上がった汁物や煮付けを口にして「生臭くて食べられない」と後悔した経験を持つ人は少なくありません。ネットの掲示板や知恵袋でも「アラ汁を作ったが部屋中に魚臭さが充満した」「生姜や酒を大量に入れたのに臭みが消えない」といった悲鳴のような相談が後を絶ちません。なぜ、アラは切り身以上に強烈な臭いを発してしまうのでしょうか。その背景には、調理科学で明確に説明できる魚のアラが生臭い原因が存在します。
魚の臭気成分の主たる正体は、死後時間の経過とともに魚体内のトリメチルアミンオキシドが細菌によって還元されて生成されるトリメチルアミン(TMA)です。加えて、魚の脂質に含まれる不飽和脂肪酸が空気中の酸素に触れて酸化した「過酸化脂質」や、そこから生じるヘキサナールなどのアルデヒド類が混ざり合い、特有の嫌な生臭さを形成します。
アラが特に臭いやすい最大の理由は、骨の隙間や頭部、エラ周辺に毛細血管が集中しており、酸化しやすいヘモグロビンやミオグロビンを含む「血合い(凝固した血液)」が大量に残っている点にあります。血液は腐敗の温床となりやすく、加熱されることで特有の鉄臭さと生臭さを放ちます。さらに、表面に付着した体表粘液(ムチン質)には雑菌が繁殖しており、これが湯や煮汁に溶け出すことで、料理全体を生臭く汚染してしまうのです。これが魚のアラ 臭み取り 理由を理解する上で最も重要な出発点となります。
「酒や生姜を足せば消える」という思い込みは大きな誤解です。臭みの元となる物質が表面や隙間に物理的に付着した状態のままマスキング(匂いの上書き)を試みても、揮発したアルコールとともに悪臭が立ち上るだけに終わります。臭みの元を「化学的に排出し、物理的に洗い流す」ことこそが、失敗を防ぐ唯一の突破口です。