千両と万両を迷わず識別するために、園芸のプロや仲卸のバイヤーが最初に着目するのが「実のつく位置」と「葉のつき方」です。この2つのポイントさえ押さえれば、遠目からでも数秒で確実に見分けることが可能です。
まず実のつき方ですが、千両は葉の「上」に実が乗り、万両は葉の「下」に実が垂れ下がります。千両は枝の先端、みずみずしい緑の葉の上に直径5〜6ミリほどの赤い実が数個から十数個まとまって上向きにつきます。上から見下ろしたときに実が前面に押し出されるため、非常に華やかで活発な印象を与えます。
対する万両は、傘のように広がる濃い緑の葉の下側に、小房に分かれた赤い実がぶら下がるように実ります。まるで葉が屋根のように実を覆い隠す控えめな姿をしており、下からのぞき込むと重厚な実なりを確認できます。
次に決定打となるのが「葉の生え方(葉序)」と「葉縁の形状」です。植物学上、葉の配置パターンは揺るぎない鑑別基準となります。
- 千両の葉:枝の同じ節から2枚の葉が左右対称に向かい合って生える「対生(たいせい)」です。葉のフチにはノコギリの歯のような鋭く尖ったギザギザ(鋸歯・きょし)があり、葉質は比較的薄く、明るい黄緑色から濃緑色をしています。
- 万両の葉:枝の節ごとに葉が交互またはらせん状につく「互生(ごせい)」です。葉のフチは尖っておらず、波打つような丸みのあるギザギザ(波状鋸歯)が見られます。さらに葉は肉厚で硬く、深い深緑色で強いツヤを放っているのが特徴です。
樹形にも明確な個性が現れます。千両は地際から何本もの細い茎が立ち上がる「株立ち状」に育ち、樹高は70センチから1メートルほどに収まります。一方の万両は、しっかりとした主幹が直立して1本の木としての骨格を作り、成長すると樹高1メートル前後に達し、上部に枝葉を傘状に広げます。この立体構造の違いを把握しておけば、実が落ちてしまった季節でも見誤る心配はありません。