なぜここまで具体的な噂として定着してしまったのか。取材班は、デマが拡散する過程で燃料となった3つの決定的な背景を特定しました。
第1の決定打は、神奈川県立高校再編計画の本格化です。少子化に伴い、県教委は県立高校の再編・統合を段階的に断行してきました。記憶に新しいところでは、逗子高校と逗葉高校が統合されて「逗子葉山高校」へと生まれ変わるなど、湘南・三浦地区の公立校再編が現実のものとして進んだ経緯があります。この動きを目の当たりにした中学生や保護者層の一部が、「次は海沿いの七里ガ浜も統合されるのではないか」と連想し、憶測が瞬く間に拡散していきました。
第2の決定打は、東日本大震災以降に根強く囁かれてきた津波リスクと移転説です。「海の目の前」という日本屈指のロケーションゆえに、相模トラフ巨大地震や南海トラフ地震発生時における大津波を懸念する声がネット掲示板などで繰り返し議論されてきました。しかし、現地の地理的条件を確認すれば誤解であると即座に分かります。学校敷地は七里ヶ浜駅前の海岸線から一段上がった標高約25〜30メートルの高台に位置しており、神奈川県の津波浸水想定区域のハザードマップからも完全に外れています。むしろ地域住民の一時避難場所としての機能を担っており、津波を理由とする移転計画は存在しません。
第3の決定打は、敷地内で実施された大規模な校舎改修工事(長寿命化改修)です。工事期間中、グラウンドに仮設プレハブ校舎が立ち並び、重機が頻繁に出入りする光景を見た近隣住民や江ノ電の車窓からの乗客が、「いよいよ校舎を取り壊して閉校するのか」と誤認。SNS上で「七高が取り壊されている」といった断片的な情報が拡散し、火種を決定的なものにしました。