安全基準をクリアした枝肉は、東京の芝浦や大阪、名古屋などの食肉卸売市場へと集結します。ここで繰り広げられるのが、目利きと相場勘が火花を散らす「セリ」です。
セリに先立ち、一般社団法人日本食肉格付協会の専門格付員によって、肉の等級が厳密に判定されます。牛肉であれば「A5」や「B3」といった歩留等級(A〜C)と肉質等級(1〜5)の格付けです。脂肪交雑(サシの入り具合)、肉の光沢、締まりとキメ、脂肪の質を判定するため、第6〜第7肋骨間を切開し、その断面を冷徹なプロの目で審査します。
仲卸業者や大手精肉バイヤーたちは、電光掲示板に表示される血統、肥育農家名、枝肉重量、格付けデータ、そして自らの肉眼で確認したサシのキレを見極め、手元のボタンで入札を行います。数秒単位で競り落とされるスピード感は圧巻であり、ここで成立した価格が日本全国の店頭価格の基準となります。
同時に注目すべきは、世界に誇る「国産肉トレーサビリティシステム」の実力です。国内で生まれたすべての牛には、耳標として「10桁の個体識別番号」が付与されています。この番号は独立行政法人家畜改良センターのデータベースに直結しており、一般の消費者でもスマートフォンから番号を入力するだけで、以下の履歴をすべて追跡できます:
- 牛の生年月日と性別
- 母牛の識別番号と品種(黒毛和種、交雑種など)
- どの都道府県のどの農家で生まれ、誰が肥育したか
- どこの食肉処理場でいつ処理され、どこの市場を通ったか
BSE(牛海綿状脳症)問題を機に整備されたこのシステムは、虚偽表示の排除や食中毒発生時の迅速な流通停止を可能にしており、私たちが日常的に口にする国産肉の透明性を担保する盤石の基盤となっています。