本作のドラマ性を極限まで高めているのは、読者の感情を激しく揺さぶる登場人物たちの強烈なキャラクター造形と、緻密に練られた心理的対立です。
主人公は、温かな家庭環境で真っ直ぐに育った理知的な人物として描かれます。当初は相手への情から違和感を飲み込もうとしますが、家族を侮辱され、実家の平穏を脅かされた瞬間に覚悟を決め、冷静沈着な策士へと覚醒します。感情論に流されず、法的な証拠集めに徹する姿勢が読者の深い共感を呼びます。
対する婚約者は、外面の良さと裏腹に強烈なマザコン気質と卑劣さを併せ持つ人物です。自分の力で生活を築く気概は皆無で、「玉の輿」に乗ることでこれまでの怠惰を帳消しにしようと企んでいます。そしてその背後で糸を引くのが、傲慢で支配的な義母です。「息子の嫁の財産は私のもの」「贅沢な暮らしをして当然」という特権意識に凝り固まり、主人公を見下しながらもその資産に寄生しようとする姿は、まさに毒親の典型例として描かれています。
さらに、我が物顔で豪邸の部屋を物色し、主人公の私物を勝手に持ち出そうとする非常識な義妹や、事なかれ主義で暴走を黙認する父親など、一家全員が揃ってモラル破綻者である点が、後のスカッとする制裁のカタルシスを倍増させるスパイスとなっています。