かつて三社祭で見られたヤクザや刺青姿の担ぎ手たち。一体なぜ排除され、神輿乗りは禁止されたのか?警視庁による暴力団排除の経緯から現在の状況まで、噂の真相を徹底検証します。最大の転換点となったのは、2006年から2008年にかけて起きた一連の強制捜査と断固たる神事中止の判断でした。
三社祭の熱気が最高潮に達する日曜日早朝の「本社神輿宮出し」では、浅草寺本堂裏から繰り出す一之宮・二之宮・三之宮の神輿の上に担ぎ手が強引によじ登り、激しく揺さぶる「神輿乗り」が横行していました。神輿は神様の御霊(おみたま)が宿る神聖な乗り物であり、その上に土足で乗る行為は宗教的タブーであるばかりか、重さ約1トンの神輿のバランスを崩して下敷きになる重大事故の危険を常に孕んでいました。
浅草神社奉賛会は再三にわたり自粛を呼びかけたものの、示威行為をエスカレートさせる一部の同好会は忠告を無視。2006年には神輿の鳳凰(ほうおう)が破損する事態にまで発展しました。事態を重く見た警視庁浅草警察署は2007年、神輿に乗った男らを東京都迷惑防止条例違反などの容疑で現行犯逮捕する方針を固め、実際に複数の逮捕者を出す事態となりました。
そして2008年、浅草神社と奉賛会は歴史的な決断を下します。「神社の神聖なる尊厳が保てない以上、神事は行えない」として、三社祭の目玉である本社神輿の宮出し・宮入りを全面中止にしたのです。700年近い歴史を誇る大祭において、荒天以外の理由による宮出し中止は前代未聞の激震でした。地域経済への打撃を懸念する声もありましたが、奉賛会幹部と地元商店街、そして浅草警察署が強固に結束し、「神輿に乗った瞬間に渡御を中止する」「暴力団の介入を一切許さない」という断固たる方針を打ち出したことで、長年放置されてきた歪な構造に決定的なメスが入ることとなりました。