現場の害虫駆除業者や住宅管理関係者へのヒアリング取材を行うと、ムカデとヤスデの被害相談には明確な季節変動と発生メカニズムのパターンが浮かび上がってきます。
ムカデの活動がピークを迎えるのは年に2回あります。1回目は産卵期を迎えて活動が活発化する5月中旬から6月下旬、そして2回目は春に孵化した子ムカデが成長し、越冬場所を求めて徘徊する9月から10月中旬です。ムカデは極度の乾燥を嫌い、日中は庭石の下、朽ちた木片、プランターの底、積まれたブロックなどの暗く湿った隙間に潜伏しています。夜間になると餌である昆虫の気配を追い、外壁のわずかな隙間から屋内に侵入します。
一方、ヤスデの発生は梅雨時期(6月から7月上旬)に集中します。ヤスデは本来、土壌中の有機物を食べる大人しい生物ですが、長雨によって土中の水分が飽和状態になると、溺死を避けるために一斉に地表へ脱出します。このとき、数十万から数百万匹規模の個体がブロック塀や住宅の基礎外壁を埋め尽くすように登り始め、開口部から家屋へと侵入する「集団登攀(とうはん)」という現象を引き起こします。
大手害虫防除技術者の証言によると、両者の屋内侵入経路には驚くべき共通点と現場特有の盲点が存在します。
「ムカデやヤスデの侵入経路を調査すると、玄関ドアのアンダーカットや網戸の建て付け不良のほか、エアコンのドレンホース(排水管)や壁面の貫通スリーブ配管の隙間が上位を占めます。ムカデはわずか数ミリの隙間があれば、頭部をねじ込んで平たい体を滑り込ませることが可能です。また、2階の寝室でムカデに噛まれる事例が後を絶ちませんが、これはムカデが外壁のモルタルや蔦、雨樋を伝って上層階まで容易に登り切れるクライミング能力を持っているからです」
SNSや相談掲示板に寄せられる被害報告を分析しても、「朝起きたら布団の中にムカデが潜り込んでいた」「靴を履こうとしたら中にヤスデが入っていた」という体験談が目立ちます。特に寝具内への侵入は、人の体温や暗所を好むムカデの習性によるものであり、無防備な就寝中に刺咬事故が多発する温床となっています。