「朝一番で行ったのにもう空だった」「入荷した形跡すらない」という都市伝説めいた噂の真相を探ると、そこには単なるファンの熱狂にとどまらない、市場構造上の決定的な3つの要因が浮かび上がってきます。
第1の要因は、世界的なメガヒットIPならではの「訪日インバウンド需要の爆発」です。渋谷、秋葉原、池袋、新宿といった主要観光拠点の大型カプセルトイ売り場を取材すると、外国人観光客が両替機で大量の100円玉を用意し、特定の作品をボックスごと買い占めるような光景が日常化しています。『進撃の巨人』は欧米やアジア圏での認知度が突出して高く、旅の記念品やお土産としてカプセルトイが格好のターゲットになっているのです。国内ファンが仕事帰りや放課後に立ち寄る夕方の時間帯には、すでに昼間の観光客によって自販機が空にされているケースが多発しています。
第2の要因は、圧倒的な支持を集める特定キャラクターへの需要集中と、二次流通プラットフォームを舞台にした転売行為の横行です。特に作中屈指の人気を誇るリヴァイフィギュアガチャや、どこか哀愁漂う独特の座りポーズで大ヒットを記録している進撃の巨人まちぼうけシリーズなどは、1回400円〜500円のカプセルトイでありながら、フリマアプリ上で特定キャラ単体に数倍のプレミアム価格がつく現象が後を絶ちません。これにより、フリマ出品を目的とした非ファン層による機械ごとの買い占めが誘発され、一般のファンが適正価格で手に入れられない品薄ループが形成されています。
第3の要因は、メーカー側の製造リードタイムと生産ロットの厳密なコントロールです。玩具メーカーの関係者への取材によると、昨今の精緻なフィギュア系カプセルトイは、金型設計から彩色、安全基準検査に至るまで高度な製造工程を要し、一度売り切れたからといって翌週に即座に追加生産できる性質のものではありません。過剰在庫のリスクを避けるため初回ロットは慎重に設定されており、実需要がメーカー側の想定上限をわずかに上回っただけでも、市場全体が瞬時に飢餓状態に陥る構造になっているのです。