左側が見えないのは目の病気ではない?半側空間無視の真実と最新リハビリ

左側が見えないのは目の病気ではない?半側空間無視の真実と最新リハビリ

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「左が見えていない」と聞くと、多くの人は網膜や視神経のトラブルを連想します。しかし、半側空間無視の原因は脳梗塞や脳出血といった脳卒中です。網膜に映った視覚情報は視神経を通じて後頭葉へ届いていますが、その情報に「注意を向ける」ための脳内ネットワークが機能不全に陥っています。

この障害の際立った特徴は、臨床現場において右半球損傷に伴う左半側空間無視が圧倒的に多く、重症化しやすい点にあります。なぜ左脳損傷では生じにくく、右脳の損傷で多発するのでしょうか。神経科学の知見では、左右の脳が担う「注意の配分範囲」の非対称性によって説明されています。

左脳は主に「右側」の空間にしか注意を向けることができません。これに対し、右脳は左右両方の空間全体に注意を配る統合的な役割を担っています。そのため、左脳が損傷を受けても残された右脳が右側の空間をカバーできるのに対し、右脳(特に頭頂葉下部や側頭葉・前頭葉を結ぶ神経ネットワーク)が広範囲に損傷すると、左側の空間に注意を向ける司令塔が消失し、左半側の世界が知覚からすっぽりと抜け落ちてしまいます。

日本脳卒中学会などの臨床統計によると、脳卒中で右半球に急性期病変を生じた患者の約30〜40%に何らかの無視症状が現れると報告されています。患者本人にとっては「左側が見えていない」のではなく、「最初から左という概念や空間が存在しない」感覚に近い状態が生じています。

鈴木 陽菜
著者

鈴木 陽菜

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