気仙沼のカツオを楽しむ上で不可欠なのが、季節によって全く異なる表情を見せる「二度の旬」と相場のメカニズムである。
第1の波は、初夏(5月下旬〜7月)に到来する初ガツオだ。南の海から黒潮に乗って北上してくるこの時期のカツオは、運動量が豊富で余分な脂肪が削ぎ落とされている。肉質は透き通るようなルビー色で、赤身特有の爽やかな酸味とみずみずしい鉄分の旨味が際立つ。卸値相場はシーズン初期のご祝儀相場(キロ1,500円以上)から始まり、6月下旬の大規模水揚げによってキロ500円前後の手頃な水準へと落ち着いていく。
第2の波にして気仙沼の真骨頂といえるのが、秋(8月下旬〜10月下旬)に南下してくる戻りガツオである。三陸沖から北海道沿岸で豊富なサンマやイワシを飽食し、冷たい親潮で身を引き締めたカツオは、全身にきめ細やかな霜降り状の脂を蓄える。脂質含有率は初ガツオの3倍から5倍に達し、断面は淡い桜色に染まる。「トロガツオ」とも称されるこの時期のカツオは市場での争奪戦が激しく、卸値はキロ1,000円を超えて高値安定する傾向にある。
気仙沼の相場形成における最大の特徴は、徹底した「生鮮へのこだわり」にある。市場に持ち込まれるカツオは、船倉で氷海水によって芯まで急速冷却(施氷)された未冷凍のものばかりだ。鮮度落ちが極めて早い魚種だからこそ、入船情報の速報が出た瞬間に仲買人が魚群の質、一本釣りによる魚体のスレの有無を見極め、秒単位のセリで適正価格が決定される。