「第一種電気工事士を取っても、結局は肉体労働だから歳を取ったら続けられない」――ネット上に散見されるこのような言説は、現場のキャリアパスに対する重大な誤認です。第一種が真価を発揮するのは、実は40代以降のキャリアの後半戦や、定年後のセカンドキャリアにおいてです。
シニア層における最大の強みは、「ビルメンテナンス(設備管理)業界」での無双状態にあります。一般的に定年退職後の再雇用では給与が激減し、清掃や警備などの職種に回されるケースが少なくありません。しかし、一種免状を持つ技術者は、高圧受電設備を有する大型複合施設や病院、データセンターの常駐管理技術者として引く手あまたです。身体を激しく動かす配線工事ではなく、中央監視室での計器チェックや業者工事の立ち会い、定期点検の統括といった「身体に負荷の少ない維持管理業務」で月給25万〜35万円以上を維持し、70歳近くまで現役で働き続ける技術者が大勢存在します。
また、独立開業(一人親方)を目指す場合においても、第二種だけでは請け負えない工場や商業店舗の改修案件に直接元請け・一次下請けとして食い込めるため、案件単価が倍近く跳ね上がります。もちろん、高圧設備の工事には万が一の際の重大事故リスクや、高価な測定機器(絶縁抵抗計、継電器試験装置等)を揃える初期投資が必要というシビアな現実もありますが、「選べる仕事の幅」は第二種とは比較になりません。
【プロの結論】一種電工を目指すべき人・第二種で十分な人の判断基準
現場のリアルと資格の特性を踏まえると、すべての人に第一種が必要なわけではありません。自身のキャリアプランと照らし合わせ、以下の判断基準を持つことが賢明な投資となります。
▼ 第一種電気工事士を絶対に取得すべき人:
- 電気工事会社やサブコンに勤務し、高圧設備工事や工場・プラントの現場に携わっている人
- 将来的に職長、現場代理人、あるいは独立して大型案件の受注を狙いたい人
- 将来のセカンドキャリアとして、定年後も高圧ビルメンテナンス等の安定した環境で長く稼ぎ続けたい人
- 施工管理技士の資格と組み合わせて、給与・待遇の大幅なキャリアアップを実現したい人
▼ 第二種電気工事士のままで十分な人:
- 戸建て住宅のエアコン取り付け、リフォームに伴うコンセント増設など、低圧工事に特化して稼ぐスタイルの人
- 自宅のDIYや太陽光発電・蓄電池の小規模な自己施工が主な目的である人
- 現職が高圧設備とは一切無縁であり、今後も実務経験(3年間)を積む見込みがまったくない人