ネット上のレシピを真似てみたものの、「まるでお煎餅のようにガリガリと硬くなってしまった」「中が生焼けの団子状態になり、噛むと歯にくっつく」といった挫折の声を耳にすることは少なくありません。この現象が起きる背景には、最中の皮が失敗する決定的な理由が存在します。それは、生地に含まれる水分の気化爆発を物理的に抑え込む「型締め圧力」の不足です。
そもそも専門業者が行う最中種の作り方では、水稲もち米を精白・水浸漬・蒸煎・搗餅(餅つき)したのち、薄く延ばして冷まし、細かく型抜きした生地を約200℃前後の金型に投入します。金型を上下から数トン単位の油圧プレスで密閉固定した状態で一気に加熱することで、餅の内部の水分が爆発的に気化し、微細な気孔が無数に形成されながら型の隅々まで均一に膨張します。これが、あの羽のように軽い口どけの正体です。
一方、家庭のオーブンやフライパンで平焼きにすると、発生した水蒸気が上方向へ自由に逃げてしまうか、あるいは蒸気が抜けきらずに内部に残留します。圧力がかからない開放環境では、デンプンが緻密に焼き固まって「薄焼き煎餅」になるか、蒸気で蒸されて「湿った焼き餅」になってしまうのです。この物理現象の差異を理解しないまま一般的な焼き菓子と同じ感覚で加熱することが、家庭調理における最大の落とし穴といえます。