強皮症は、厚生労働省によって指定難病51(全身性強皮症)に指定されている原因不明の慢性自己免疫疾患です。国内の患者数は約3万人から3万5000人程度と推計されており、男女比はおよそ1対9から1対10と圧倒的に30代から50代の女性に好発する特徴を持っています。
病気の本態は、大きく分けて次の「3つの異常」が複雑に絡み合うことで生じます。
- 自己免疫の異常:本来は外敵から身を守るはずの免疫系が暴走し、自分自身の細胞や血管を異物とみなして攻撃する自己抗体(抗核抗体など)を産生する。
- 血管内皮障害:全身の微小血管が傷つき、血管の内腔が狭くなって血流障害や虚血を引き起こす。
- 線維芽細胞の活性化(線維化):コラーゲンなどの結合組織が異常に大量産生され、皮膚や内臓に過剰沈着して組織が硬くなる。
医学的に「なぜ起きるのか」という根本原因は完全には解明されていませんが、遺伝的な体質(疾患感受性遺伝子)をベースに、ウイルス感染、環境ホルモン、シリカなどの化学物質曝露、過度の精神的・肉体的ストレスといった環境因子が引き金となって免疫バランスが崩れると考えられています。親から子へ直接遺伝する病気ではなく、感染症でもありません。
強皮症を理解する上で極めて重要なのが、皮膚のみに限局して内臓を侵さない「限局性強皮症(モルフィアや線状強皮症)」と、全身の血管や内臓に病変が及ぶ「全身性強皮症(SSc)」の明確な区別です。一般に難病指定され、生命予後や全身管理が議論されるのは後者の全身性強皮症であり、さらに皮膚硬化の広がりによって以下の2タイプに分類されます。
- びまん皮膚硬化型全身性強皮症(dcSSc):発症から数年以内の早期に、手足だけでなく体幹(胸やお腹)や顔面まで急速に皮膚硬化が進行するタイプ。間質性肺炎や腎クリーゼ、心筋障害などの重篤な内臓病変を合併しやすいため、発症初期からの強力な免疫治療介入が求められます。
- 限局皮膚硬化型全身性強皮症(lcSSc):皮膚硬化が手指、手首、あるいは肘・膝より先、顔面に限局するタイプ。進行は極めて緩徐で、何十年も大きな悪化がないまま経過することも少なくありません。ただし、長期経過後に肺動脈性肺高血圧症などを合併するリスクがあるため、定期的な経過観察が欠かせません。