結論から整理すると、全国の大部分を占める月遅れ盆(8月盆)において、送り火を焚く正解の日時は「8月16日の夕方(日没前後)」です。東京の下町や横浜、静岡の一部地域などで定着している新暦盆(7月盆)を採用している場合は、ひと月早い「7月16日の夕方」に行います。
時間帯の目安は、周囲が薄暗くなり始める17時から19時頃が一般的です。古来、夕暮れ時は現世(此岸)とあの世(彼岸)の境界が曖昧になる逢魔が時(おうまがとき)とされ、ご先祖様の魂が迷わず夜道を照らされて帰れるよう、この黄昏時に火を灯す習わしが受け継がれてきました。
ただし、日本各地の民俗調査を紐解くと「16日夕方」だけが唯一の正解ではない実態が浮かび上がります。一部の地域や寺院の指導では、以下のような異なる運用が根付いています。
「ご先祖様には少しでも長く家にいてほしい」という敬愛の念から、16日の日中はゆっくりと滞在してもらい、完全に陽が落ちた夕暮れ以降に火を焚くのが通例です。その一方で、奈良県や長野県の一部、あるいは関西の特定地域では「15日の夕方または夜」に送り火を行い、16日には精霊がすでに旅立っているとみなす「15日盆」の風習も現存します。親族が集まる日程や菩提寺の法要スケジュール、地域の慣習を事前に確認しておくことが、無用な混乱を防ぐ第一歩となります。