スクリーンに目を転じれば、日本映画業界を揺るがした大きな波が存在した。経営難に直面した日活株式会社が1971年に踏み切った「日活ロマンポルノ」の路線転換である。「10分に1回の濡れ場を入れる」という厳しい商業的ルールの裏で、若手監督たちには破格の表現の自由が与えられていた。
この環境から、のちに日本映画界を背負うことになる異彩を放つ監督や撮影スタッフが次々と輩出された。彼らは限られた予算と時間の中で、実験的なカメラワークや深い人間ドラマを盛り込み、低予算映画の枠を超えた傑作を生み出していったのである。
さらに、大島渚監督が手がけた『愛のコリーダ』は、性表現の限界と表現の自由を巡り、裁判にまで発展する一大論争を巻き起こした。しかし、その圧倒的な美学と情念の描写は海外で絶賛され、カンヌ国際映画祭などでも高い評価を獲得。今日では、これら一連の作品は単なるポルノグラフィではなく、昭和という時代の空気感を閉じ込めた重要な映画遺産として芸術的再評価が進んでいる。