文翔館を訪れた来館者から寄せられる感想の多くに、「想像を遥かに超える空間の重厚さ」「無料とは思えない保存状態の良さ」という声が並びます。現場を歩くことで体感できる決定的な見どころは、主に以下の4つのポイントに集約されます。
第一のハイライトは、シンボルである時計塔です。札幌時計台に次いで「日本で2番目に古い現役の機械式時計塔」であり、4面すべてに文字盤を備えています。現在も専門職人が週に2回、急な階段を登って手動で重さ約100kgの分銅を巻き上げることで、100年以上にわたり正確な時を刻み続けています。中央階段吹き抜けから見上げる塔の構造美は息を呑む迫力です。
第二は、公式行事や訓示が行われた正庁(せいちょう)の天井装飾です。職人の手仕事によって再現された「紅花」をモチーフにした立体的な漆喰(しっくい)レリーフは、見上げる者を圧倒します。一枚一枚の花びらまで手作業で彫り起こされた職人芸は、まさに美術品の極致といえます。
第三は、寄木細工の床が美しい旧知事室・貴賓室です。幾何学模様に組み合わされた銘木の床面、当時の製法を忠実に再現した復元絨毯、西欧輸入の家具類が完璧に調和しており、大正期の知事執務室の厳かな空気感がそのまま保存されています。
第四に、渡り廊下で結ばれた旧県会議事堂も見逃せません。かまぼこ型のヴォールト天井が生み出す抜群の音響効果を誇り、議事堂としての役目を終えた現在も、クラシックコンサートや市民文化活動の舞台として第一線で活用されています。