市販薬ODに関して最も根深く、かつ危険な誤解が「ドラッグストアで売っている医薬品なのだから、違法薬物に比べて安全であり、いつでも自力でやめられる」という認識です。しかし、薬理学的な依存性の強さにおいて、コデインやエフェドリンの多量連用は麻薬や覚醒剤と本質的に大きな差はありません。
第一の盲点は、「添加物による急性臓器不全」です。総合感冒薬や鎮咳去痰薬には、主成分以外にもアセトアミノフェンやクロルフェニラミンなどが複合配合されている製品が多く存在します。これらを過量摂取した場合、依存成分よりも先に解熱鎮痛成分の毒性によって急性劇症肝炎や無尿症を引き起こし、数日のうちに生命の危機に瀕する事例が数多く報告されています。
第二の盲点は、「耐性の形成スピードの速さ」です。脳の神経受容体は過剰な刺激に対して自己防衛のために受容体数を減衰させます。そのため、初回に感じたような浮遊感や安心感は急速に失われ、次第に「平常心を保つため」「離脱の苦痛をゼロに戻すため」だけに大量の錠剤を胃に流し込む状態へ移行します。これは完全なアディクション(依存症)の病態であり、個人の意志の強さだけでコントロールできる領域を完全に逸脱しています。