てっさを嗜む上で、もう一つの主役となるのが「ふぐのひれ酒」です。こんがりと香ばしく焼き上げたヒレに熱燗を注ぎ、蓋をして蒸らしたひれ酒は、独特の芳醇なアミノ酸の香りを放ちます。
淡白で洗練されたてっさと、濃厚で温かいひれ酒は抜群の相性を誇ります。冷たいてっさを口に運び、しっかり噛み締めて旨味を味わった直後に温かいひれ酒を一口含むと、口内の温度でとらふぐの上品な脂がふわっと溶け出し、極上の余韻が広がります。
なお、料亭でありがちな盲点として「箸先で器をカチャカチャと擦らないこと」が挙げられます。極薄のてっさを取ろうと焦るあまり、高価な漆器や陶磁器の表面を箸で強くこするのは厳禁です。刺身の端を箸先で軽く浮かせ、手前へ優しく引くようにすると器を痛めず美しく取ることができます。
【プロの結論】てっさを本当に堪能できる人と台無しにしてしまう人の判断基準
ふぐ料理の真価を存分に楽しめる人と、せっかくの高級料理を台無しにしてしまう人には明確な違いがあります。
- 堪能できる人:薄造りの視覚的芸術を愛で、まずは薬味なし、あるいは塩や酢橘だけで1枚味わい、その後ネギを巻いて食感のグラデーションを楽しむ人。器や同席者への配慮が行き届いている。
- 台無しにしてしまう人:最初からポン酢に薬味を全投入してジャブジャブに浸し、大皿から身を乱暴に削ぎ落とす人。これでは上質なとらふぐ本来の繊細なイノシン酸の旨味を感じることはできません。