誰もが口をすぼめるほど酸っぱい梅干しやレモンが、化学的な分類においてなぜ「アルカリ性の代表格」とされるのか。これには食品化学の原点ともいえる定義が関係しています。
日常の感覚では、舌で「酸っぱい」と感じる液体は酸性、苦みがあったり石鹸水のようにヌルヌルするものがアルカリ性だと捉えられがちです。しかし、栄養学における「酸性食品」「アルカリ性食品」の区分は、口に入れたときの性質ではなく、食品を高温で完全に燃焼させて『灰』にしたときに残る元素の性質によって決められます。
この分類法は19世紀後半、スイスの生理学者グスタフ・フォン・ブンゲらによって提唱され、大正時代から昭和初期にかけて日本でも急速に普及しました。食品に含まれる微量元素は、大きく次の2つに分かれます。
- 酸生成元素(酸性ミネラル):リン(P)、硫黄(S)、塩素(Cl)など。水に溶けるとリン酸や硫酸を生じ、酸性を示します。
- 塩基生成元素(アルカリミネラル):ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)など。水に溶けるとアルカリ性を示します。
梅干しのあの鋭い酸味の正体は、有機酸である「クエン酸」です。クエン酸そのものは酸性ですが、体内に入ると代謝酵素の働きを介して二酸化炭素(CO2)と水(H2O)に完全に分解され、最終的には呼気や尿として体外に排出されます。後に残るのは、梅干しに豊富に含まれるカリウムやナトリウム、マグネシウムといったアルカリ金属の微量元素です。そのため、燃焼試験でも体内代謝の後でも「アルカリ性食品」として堂々の位置付けを獲得することになります。
一般的な酸性食品との違いと見分け方は明快です。肉、魚、卵、穀類など、タンパク質(硫黄を含むアミノ酸)やリン酸を多く含むものは酸性食品に分類されます。一方で、野菜、果物、海藻、大豆、きのこ類など、土壌や海水からアルカリミネラルをたっぷりと吸収して育つ植物性食品の多くがアルカリ性食品に属します。