『3年B組金八先生』シリーズといえば、第1シリーズ(1979年)の「中学生の妊娠」、第2シリーズ(1980年)の「校内暴力・腐ったミカン」、第5シリーズ(1999年)の「学級崩壊と薬物乱用」など、常にその時代の最も先鋭的な社会問題を世に問うてきました。その系譜の中で、21世紀の幕開けとなる2001年に放送された3年B組金八先生 第6シリーズのメインテーマに据えられたのが「性同一性障害」でした。
上戸彩が演じた鶴本直は、身体は女性でありながら自認する性は男性という葛藤を抱え、女子の制服であるセーラー服を拒絶し、男子の詰め襟学生服を着て登校することを望む転校生でした。当時の日本社会において「性同一性障害」という言葉は、医療や法曹などの専門分野を除けば一般的な認知度が極めて低く、教育現場でも公然と議論されることはほぼ皆無でした。
番組が放送されるや否や、TBSには視聴者から賛否両論を含む膨大な反響が寄せられました。報道各社の当時の取材データによると、「中学生が扱うテーマとして刺激が強すぎる」という保守的な意見があった一方で、当事者やその保護者からは「誰にも言えなかった苦しみを初めて代弁してくれた」「生きる勇気をもらった」という感謝の手紙や電話が殺到したと記録されています。第6シリーズは全22話を通じて平均視聴率18.2%、最終回では20.6%(関東地区・ビデオリサーチ調べ)という高数値を記録し、社会的な議論を巻き起こす起爆剤となったのです。