組織票を支える母体は、大別して「労働組合」「宗教団体」「業界団体・職能団体」の3大勢力に分類されます。それぞれの現場では、一般の有権者からは見えにくい独自の動員システムが緻密に稼働しています。
第一に、労働組合が擁立する「労働組合組織内候補」です。製造業、電力、情報通信、自治体職員などの産別労組(産業別労働組合)では、執行部が推薦した候補者を当選させるため、職場集会や機関紙を通じて徹底した浸透が図られます。大手メーカーの労組幹部が残した手記には、「組合員一人ひとりに名簿カードを配り、家族や親戚の氏名を記入させ、電話がけの完了チェックを課す。達成率が低い支部は会議で吊し上げに遭うため、現場のプレッシャーは凄まじい」という生々しい告白が記されています。
第二に、選挙の現場で最も結束力が強固とされるのが「宗教団体票田」です。信者個人の強烈な信仰心や教団幹部への忠誠心が原動力となっており、報酬を伴わないボランティアとして自主的に「F票(Friend票=友人・知人への働きかけ)」を積み上げます。知人関係をローラー作戦で巡回し、「公約を熱心に説明する」「投票日前日に念押しの連絡を入れる」といった活動が全国規模で一糸乱れず展開されるため、他陣営からは「最も崩しにくい鉄板の票」と恐れられてきました。
第三に、建設業協会、医師連盟、農協、トラック協会などの「業界団体推薦」です。この分野では「職域投票の実態」が色濃く現れます。業界の存続に関わる法改正や公共事業予算の確保、税制上の優遇措置を勝ち取るため、企業経営層から現場の従業員に対して推薦状や後援会入会カードが回覧されます。現場では「会社でお世話になっている先生だから」という空気感の中で、事実上の投票圧力が生み出される構造が長年維持されてきました。