市街地での被害拡大を受け、「警察やハンターで対応できないなら、自衛隊を出動させるべきだ」という世論が強まるのは当然の帰結と言える。だが、自衛隊法が定める部隊動員には極めて厳格な要件が存在する。検討の対象となる枠組みは主に「災害派遣」と「治安出動」の二つだが、そのいずれも即座の適用には高いハードルが存在する。
災害派遣は自然災害だけでなく、「公の秩序を維持し、または人命・財産を保護するため緊急の必要がある場合」にも適用され得る。しかし、有害鳥獣の捕獲という個別的な警察行動の延長線上にある事案に対し、自衛隊が小銃などの武力を用いて害獣を直接鎮圧することは、既存の法解釈において極めて慎重な判断を要する。この出動条件および出動基準の曖昧さこそが、防衛省の判断を慎重にさせている最大の要素だ。