ネット上の相談板などで頻繁に見かけるのが、「初詣で一番大吉を引いた数週間後に大事故に遭った」「大吉を引いてから家庭内でトラブルが続発した」という、いわゆるおみくじ大吉の後の凶をめぐる恐怖談です。
これを「大吉の呪い」や「運の先食いによる報い」と結びつける言説がありますが、現場の神職や僧侶への取材からは、より明快で人間味のある構造的理由が浮き彫りになります。
最大の盲点は、大吉という判定が引き起こす無意識の慢心と認知の歪みです。「今年は大吉だから何をやっても守られている」という根拠のない全能感は、日常の確認作業を怠らせ、人間関係での傲慢な言葉遣いを生み、運転や体調管理での不注意を招きます。つまり、大吉を引いたこと自体が災いを呼ぶのではなく、大吉という看板に寄りかかって生活規律を緩めた結果として、必然的なトラブル(凶)が引き起こされているのです。
さらに、心理学でいうカラーバス効果(特定の物事を意識すると、それに関する情報ばかりが目に飛び込んでくる現象)も影響しています。普段なら「単なる日常の不運」として片付ける些細なトラブル(小銭を落とした、電車が遅れたなど)を、「あの一番大吉のせいでツケが回ってきた」と強引に因果関係づけて記憶に焼き付けてしまうのです。