この名曲がこれほどまでに強烈なリアリティを持つのは、完全なるアンジェラ・アキの実体験(実話)に基づいているからです。音楽関係者の取材記録や過去のインタビューによると、彼女は15歳の頃、日本とアメリカのルーツを持つ自身のアイデンティティや周囲とのギャップに深く悩み、将来への不安を抱えていました。その時、彼女は「30歳になった未来の自分」に向けて1通の手紙を書き、机の引き出しの奥へと仕舞い込んだのです。
時が流れ、メジャーデビューを果たした彼女が30歳の誕生日を迎えた日、実家の母親から小包が届きます。その中に入っていたのが、まさに15歳の自分が書いたあの手紙でした。手紙には、当時の痛々しいほどの悩みや未来への切実な問いが綴られていました。大人になったアンジェラ・アキは、その手紙を読んだ瞬間に涙が止まらなくなり、「あの頃の自分に返事を書きたい」という衝動に駆られてピアノに向かったといいます。これが『手紙 〜拝啓 十五の君へ〜』の誕生秘話です。
折しも当時、NHKから第75回NHK全国学校音楽コンクール(Nコン)中学校の部課題曲の制作依頼が舞い込んでいました。中学生たちの葛藤に寄り添う楽曲を模索していた制作陣の意図と、彼女自身の原体験が見事に合致し、鷹羽弘晃氏による合唱編曲を経て、2008年秋に日本中を揺るがす社会的ヒット曲へと結実しました。