小学校教員の給与水準は公務員として決して低くはありません。それにもかかわらず、なぜ「過酷すぎる」「割に合わない」という悲鳴が現場から上がり続けるのでしょうか。その根本的な要因は、小学校特有の勤務形態と、「給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)」に起因する残業代不支給の仕組みにあります。
中学校や高校と異なり、小学校は原則として「1クラス=1人の担任」がほぼすべての教科を担当する全科担任制を敷いています。朝の登校指導から始まり、朝の会、1時間目から6時間目までの授業、休み時間の生活見守り、給食指導、掃除指導、帰りの会、放課後の児童見送りまで、教員が一人きりで児童から離れられる時間は日中ほとんど存在しません。空きコマ(授業のない時間)が週に数時間しかないため、テストの採点、通知表の所見記入、翌日の授業プリント作成、行事の企画書作成といった膨大な事務作業は、すべて児童が下校した放課後に行うことになります。
さらに近年では、発達障がいや多様な学びに対応する特別支援教育のニーズ急増、外国語(英語)教育やプログラミング教育の本格化、端末を活用したデジタル指導など、求められる職務領域が爆発的に拡大しています。保護者からの個別相談や学校トラブルへの即時対応も重なり、放課後の時間は瞬く間に奪われていきます。
現場の教員手記やSNS上の投稿を調査すると、リアルな悲鳴が浮き彫りになります。
「朝7時半に出勤し、退校時間は夜20時を回るのが当たり前。月80時間を超える時間外勤務をこなしても、給料明細に時間外手当の欄はなく、上乗せされるのは給料月額のわずか4%(教職調整額:約1万円前後)。時給換算すれば数十円レベルで、まさに『定額働かせ放題』の構造になっている」
このように、民間企業であれば支給されるはずの時間外労働手当が一切発生しない制度設計が、「業務量に対して給与が見合っていない」と現場が痛感する最大の構造的要因となっています。