伏見桃山城を訪れた際、多くの人が抱く最大の疑問が天守閣への入場制限です。結論から言えば、大天守・小天守ともに内部への立ち入りは一切禁止されています。入り口には厳重なフェンスと施錠がなされ、特別公開などの臨時開放も行われていません。
内部非公開が続いている直接的な要因は、建築物の耐震基準問題です。現在の天守閣は1964年(昭和39年)に建設された鉄筋コンクリート造(RC造)であり、1981年に導入された「新耐震基準」以前の旧基準で設計されています。京都市が実施した耐震診断調査において、大規模地震時に倒壊・崩壊する危険性が極めて高いとされる数値が算出され、安全上の観点から2003年の運動公園化以降、完全閉鎖の措置が取られました。
「なぜ耐震補強工事をして公開しないのか」という議論は長年交わされてきましたが、そこには自治体の財政構造という高いハードルが存在します。大天守(5重6階、高さ約36メートル)および小天守(3重4階)を現代の安全基準に適合させる耐震改修を行う場合、概算で数十億円規模の莫大な事業費が必要と試算されています。深刻な財政難と向き合ってきた京都市にとって、文化財指定を受けていない昭和の観光建築物に対して単独で巨額の公費を投じることは極めて困難であり、これが天守閣が長期間にわたり「外観鑑賞のみ」にとどまっている構造的な要因です。