焼き鳥専門店を訪れると、スーパーの精肉コーナーではあまり見かけない魅力的な名称が並びます。一羽からわずかしか取れない「希少部位」は、部位ごとに明確な個性を持っています。
首周りの筋肉であるせせり(小肉・ネック)は、鶏が常に首を振って餌をついばむため、筋繊維が適度に鍛えられ、もも肉以上の弾力と濃厚な脂の甘みを持っています。塩焼きやタレ焼きはもちろん、ニンニクを効かせた炒め物でも極上の存在感を示します。
尾骨の周囲に位置するぼんじり(テール・三角)は、羽の手入れを行うための油壺(あぶらつぼ)の近くにあり、肉質全体に上質な脂が蓄えられています。炭火で余分な脂を落としながらカリッと表面を焼き上げることで、外はサクサク、中はジュワッととろける特有の食感が完成します。
さらに通の間で高く評価されているのが、以下の希少部位です。
- ソリレス(ソリ):フランス語で「愚か者はそれを残す(Sot-l'y-laisse)」を語源とする、骨盤のくぼみにある赤身肉。一羽からピンポン球大で2塊しか取れず、もも肉の力強さとヒレ肉のような上品な柔らかさを兼ね備えています。
- ふりそで(肩肉):胸と手羽先の中間に位置する希少肉。むね肉のような上品な旨味と、もも肉のようなジューシーさを併せ持ち、さっぱりしつつもしっかりとした旨味を楽しめます。
- ハツ(心臓)とつなぎ(心残り):ハツは滑らかでプリッとした筋肉質特有の弾力があり、大動脈の根元部分である「つなぎ」は脂とホルモン特有の深いコクが凝縮されています。
- ヤゲン軟骨(胸軟骨)とヒザ軟骨(げんこつ):舟形のヤゲン軟骨はむね肉の先端部分でサクサクとした歯切れの良さが魅力。ヒザ軟骨はコラーゲンと骨の硬質なコリコリ感が際立ちます。
- ちょうちん:未成熟卵(きんかん)と卵管(ヒモ)を串に刺したもので、口の中で卵黄が弾ける濃厚なコクと卵管の歯ごたえが一体となる専門店の名物部位です。