一般家庭の冷蔵庫に必ずと言っていいほど鎮座している味ぽんだが、調理現場やネット上のコミュニティでは、その扱われ方を巡って長年激しい議論が交わされている。SNSや大手Q&Aサイト、料理愛好家が集うプラットフォームを調査すると、消費者の赤裸々な実態が浮かび上がってくる。
大手レシピサイトの投稿者による体験談では、次のような失敗談が散見される。
「料理研究家のレシピに『ポン酢 大さじ2』と書いてあったため、自宅にあった味ぽんを投入したところ、本来は淡い色合いに仕上げるはずの白身魚の煮浸しが真っ黒になり、醤油辛くなってしまった」(30代主婦)
実家を出て自炊を始めるまで「ポン酢=黒いタレ」と信じ込んでいた若年層は多く、一人暮らしを機にスーパーで透明な瓶に入った「純ポン酢」を発見し、衝撃を受けたという告白は枚挙にいとまがない。
一方、割烹料理店を営む料理人や調理師学校の講師に現場の証言を求めると、プロならではのシビアな視線が返ってくる。
「厨房において、市販の味ぽんは“ポン酢”とは呼びません。あれは完成された工業的な調味だれです。割烹で『ポン酢』といえば、旬のすだちや柚子を生搾りし、本醸造の薄口醤油や濃口醤油、本みりん、極上の利尻昆布と鰹節を数週間寝かせて角を取った自家製を指します。市販の味ぽんはグルタミン酸ナトリウムなどの調味料(アミノ酸等)や果糖ぶどう糖液糖が効いており、誰が使っても瞬時に味が決まる反面、繊細な天然魚の脂や出汁の余韻をマスキングしてしまうリスクがあるのです」(銀座の日本料理店・店主談)
しかし、この「完成されすぎている点」こそが、忙しい現代人の圧倒的支持を集める理由でもある。X(旧Twitter)上では「疲れて帰宅した夜、豚肉ともやしをレンジで蒸して味ぽんをかけるだけで完璧な晩酌になる」「計量の手間が一切いらない究極のオールインワン調味料」といった絶賛の声が溢れており、簡便性を極めた万能ダレとしての地位は揺るぎない。