観客からの根強い復活要望があり、主演陣もかつて愛着を語っていたにもかかわらず、探偵はBARにいる4の製作されない理由とは一体何なのでしょうか。映画ビジネスの構造と関係者の証言を総合すると、単一のトラブルではなく、複数の現実的な壁が複雑に絡み合っている実態が浮かび上がってきます。
1. 大泉洋・松田龍平のステータス変化とスケジューリングの過酷さ
第1作が公開された2011年当時と比較して、探偵はBARにいるの大泉洋と松田龍平を取り巻く環境は劇的に変化しました。大泉洋はNHK大河ドラマの主演級キャストや国民的特番の顔、劇団EXILEや舞台の重鎮へと登り詰め、名実ともに日本を代表するトップ俳優となりました。一方の松田龍平もまた、唯一無二の存在感を持つ実力派として映画・連続ドラマ・舞台から引く手あまたの状態が続いています。
本シリーズの撮影は、極寒の北海道・札幌で数ヶ月にわたる拘束を強いられます。多忙を極めるトップ俳優2人のスケジュールを、真冬のススキノロケに合わせて完全に同期させることが、物理的なキャスティング難度を極限まで引き上げています。
2. 脚本・スタッフ体制の再構築というハードル
シリーズの屋台骨を支えてきたのは、脚本家・古沢良太と須藤泰司プロデューサーの強力なタッグでした。しかし古沢良太氏もまた、大河ドラマ『どうする家康』や大作映画シリーズのメインライターとして超多忙を極めています。探偵シリーズ特有の「泥臭い昭和的ハードボイルド」と「軽妙なコメディ会話劇」の絶妙な黄金比を成立させられる脚本を練り上げるには膨大なエネルギーが必要であり、クリエイティブ陣の体制確保が難航している要因の一つとなっています。
3. 過酷を極める北海道ロケの製作費と採算ラインのシビア化
シリーズの象徴である「冬の札幌ロケ」は、観客にとっては最高の情緒ですが、製作陣にとっては莫大なコスト要因です。降雪待ち、除雪作業、機材の防寒対策、スタッフ・キャストの長期滞在費など、地方ロケ特有の製作費は年々上昇しています。後述する興行収入のデータが示す通り、第3作の興行成績に対して現在の製作費水準を適用した場合、回収ハードルが非常に高くなってしまうというシネコン時代の厳しい経済原則が存在します。
4. 「大人のエンタメ」から「若年層動員」へシフトした邦画市場の潮流
近年の実写邦画市場は、アニメ映画の爆発的ヒットやティーン層をターゲットにした恋愛・コミック実写化作品が興行の中心を占める傾向が強まっています。『探偵はBARにいる』がターゲットとする30〜50代の大人の映画ファンは、配信サービスの普及により劇場へ足を運ぶハードルが一段と上がりました。配給側が巨額の製作・宣伝費を投じるにあたり、劇場公開単体での黒字化見通しが立ちにくい市場環境が、企画進行を躊躇させる背景にあります。