1999年11月にリリースされた2ndオリジナルアルバム『LOVEppears』のラストを飾るトラックとして世に出た『Who...』(作詞:ayumi hamasaki、作曲:Kazuhito Kikuchi)。シングルカットされていないアルバム曲でありながら、ファン投票によるベストアルバムでは常に上位を独占し、実質的な代表曲として君臨してきました。
当時の特番インタビューや後年の自著・手記において、彼女自身が「ライブに来てくれたみんなのことを想いながら書いた」と語っている通り、この曲の歌詞に登場する〈あなた〉とは特定の恋人だけでなく、彼女の言葉に救いを求めたリスナー一人ひとりを指しています。当時の音楽プロデューサーとの愛憎劇や孤独を赤裸々に描いた自伝的小説『M 愛すべき人がいて』が世に出た際も、『Who...』だけは「虚構の商業主義から最も遠い場所にある純粋な祈り」として再解釈されました。
「道に迷った時は 一緒に歩いてくれた」というリフレインは、過剰な消費社会のアイコンとして搾取されそうになりながらも、ファンとの直接的な共犯関係によって自己を保っていた彼女の生存証明でした。ステージ上で時に涙で声を詰まらせながらマイクを客席に向けるその振る舞いは、2020年代半ばを過ぎた現在のステージでも、彼女とファンを結ぶ唯一無二の儀式として神聖視されています。