読者が戦慄を覚えるのは、倉持修という男が田島和幸に対して仕掛けた罠の執拗さと周到さです。単なる悪友の域をはるかに超え、田島の人生の節目ごとに現れては希望を粉砕していく手口は、極めて計画的なサイコパス的捕食そのものでした。
破滅の端緒は、小学校時代に遡ります。裕福な歯科医の息子として何不自由なく暮らしていた田島の家に、ある日「毒入り青酸カリ」をめぐる脅迫状が届きます。この事件をきっかけに家庭内は疑心暗鬼に陥り、祖母の不審死、両親の離婚、歯科医院の倒産へと一気に転落。この脅迫状を画策した張本人こそ、当時小学生だった倉持でした。
その後も倉持の吸血鬼のごとき搾取は続きます。中学生時代にはスーパーカーブームに便乗した偽グッズ販売や違法賭博へ田島を引きずり込み、多額の借金を背負わせます。青年期には、田島が純粋に愛した女性を背広や金で籠絡して略奪。さらに大人になってからは、計画的な「結婚詐欺」を仕掛けて田島に数千万円規模の連帯保証債務を負わせ、最後には悪質な連鎖販売取引(マルチ商法)のフロントマンとして利用し、田島の社会的信用を完膚なきまでに叩き潰しました。