吉高由里子が平成期に残した足跡は、単なる人気女優の枠に収まりません。彼女のキャリアを決定づけた代表作を辿ると、時代とともに移り変わる女性像のリアルが見えてきます。
衝撃のスクリーンデビューと『蛇にピアス』(2008年・平成20年)
吉高由里子の名前を映画ファンの脳裏に決定的に刻み込んだのが、金原ひとみ原作、蜷川幸雄監督による映画『蛇にピアス』でした。オーディション直前に遭った交通事故で顎を骨折するという重傷を負いながらも、痛みを隠してオーディションに臨み主演の座を射止めたエピソードは有名です。
身体改造にのめり込む主人公・ルイ役において、彼女は背中の龍の刺青や過激な性描写を一切の衒いなく熱演。当時の特番インタビューや手記において「裸になることよりも、心がむき出しになることの方が怖かった」と語っていた通り、その生々しい演技は第32回日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ数多くの賞を総なめにしました。平成中期の痛切な閉塞感を象徴する金字塔です。
国民的朝ドラヒロインへの飛翔『花子とアン』(2014年・平成26年)
エッジの効いた若手演技派から、老若男女に愛される国民的スターへとステップアップを果たしたのがNHK連続テレビ小説『花子とアン』です。『赤毛のアン』の翻訳者・村岡花子の波乱万丈な生涯を演じ切り、全話平均世帯視聴率22.6%(関東地区・ビデオリサーチ調べ)という驚異的な高視聴率を記録しました。
当時の制作関係者は「吉高さんは撮影現場で常にスタッフを笑わせながら、山梨弁と英語の台詞という二重の難関を一切弱音を吐かずにクリアしていた」と証言しています。劇中の名台詞「ごきげんよう、さようなら」は流行語となり、同年の『第65回NHK紅白歌合戦』では紅組司会という大役も務め上げました。
平成末期の働く女性を体現『東京タラレバ娘』と『わたし、定時で帰ります。』
平成が幕を閉じようとしていた2017年から2019年にかけて、吉高由里子は同世代女性のリアルな葛藤を代弁する作品で連続ヒットを飛ばします。『東京タラレバ娘』(2017年)では、恋や仕事に迷走するアラサー脚本家・倫子役をコミカルかつ哀愁たっぷりに好演。「タラレバばかり言っていたらこんな歳になってしまった」という叫びは、SNS上で激しい共感を呼びました。
そして平成最後のクール(2019年4月期)に放送されたTBS系ドラマ『わたし、定時で帰ります。』では、過度な残業を美徳とせず「定時退社」をモットーにする主人公・東山結衣を熱演。昭和から平成にかけて日本企業を覆っていた滅私奉公的な労働観に一石を投じる内容となり、「第16回コンフィデンスアワード・ドラマ賞」主演女優賞を受賞するなど、平成の終わりを告げる象徴的ドラマとなりました。