日本国内では「マサイ族のように遠くを見れば視力が回復する」「視力回復トレーニング」といった民間療法が度々話題になりますが、ここには医学的に見過ごせない盲点が存在します。
眼科学において、近視の多くは眼球の奥行きが伸びてしまう「軸性近視」に起因します。一度伸びてしまった眼軸長(眼球の前後径)は、遠くをどれだけ眺めても元の長さに縮むことはありません。したがって、すでに眼軸が伸びきった大人の強度近視が、マサイ族の真似をして緑や遠くを見るだけで視力1.5や2.0に完全回復するというのは医学的な誤解です。
ただし、一時的なピント調節の緊張(スマホ老眼や仮性近視)に対しては、遠景をぼんやり眺めて毛様体筋の緊張を解くトレーニングは確かな疲労軽減効果を発揮します。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
サバンナの視覚習慣から学ぶべきアプローチを取り入れるべき人と、過度な期待を避けるべき人の条件は以下の通りです。
- 取り入れるべき人(効果が見込める層):
- デスクワークやスマホ凝視による一時的な夕方の目のかすみ・眼精疲労に悩んでいる人
- 子どもの近視進行を予防したい保護者(1日2時間の屋外活動・太陽光浴が有効)
- 長時間の同一距離作業から意識的に目を休ませたいビジネスパーソン
- 慎重になるべき人(誤解してはいけない層):
- 「眼科を受診せずトレーニングだけで屈折異常を治せる」と信じている強度近視の人
- 白内障、緑内障、網膜剥離などの自覚症状をトレーニングで解消しようとしている人
- 無理にピントを合わせようとして目を細め、かえって眼圧や首肩に負担をかけている人