会見が紛糾すると必ずネット上で浮上するのが、「事前に質問内容が決まっている茶番ではないか」「都合が悪くなったから途中で打ち切ったのではないか」という陰謀論的な憶測です。しかし、記者クラブの慣例やメディアの危機管理実務に照らし合わせると、そこには一般にあまり知られていない業界構造のリアリティが存在します。
まず「台本の存在」についてですが、冒頭の社長ステートメントや想定問答集(Q&Aペーパー)は広報および法務チームによって周到に作成されています。これは企業広報として当然のリスク管理です。しかし、現場の質疑応答そのものが事前に握られているわけではありません。特にフリーランスのジャーナリストやネットメディア、週刊誌の記者は、広報側のコントロールが及ばない鋭利な質問を次々と投げかけます。登壇者が言葉に詰まる様子こそが、現場が「筋書きのない真剣勝負」であることの証明と言えます。
次に「会見時間の打ち切り」に関する誤解です。会見の終了時間が設定される最大の理由は、会見場の借用時間制限や、登壇者の次なる公務、さらには報道各社の夕刊・夕方ニュースの原稿締め切り(デッドライン)への配慮です。決して「逃げ出したいから一方的に切り上げる」ことだけが目的ではありません。ただし、質問者が多数残っている段階で強引に幕を引けば、メディア側は「会見は消化不良で幕引き」と報じるため、企業側にとっても打ち切りは極めてリスクの高い悪手なのです。