一連の買収防衛・企業価値向上策の中で、避けて通れなかったのがイトーヨーカ堂を中心とするスーパーストア事業の切り離しです。長年にわたりグループの売上を支えてきた祖業ですが、近年は資本効率を重視する市場から「コングロマリット・ディスカウント(複合企業ゆえに市場評価が割り引かれる現象)」の主因として名指しされてきました。
経営企画およびIRの公式開示資料を分析すると、セブン&アイの利益の大半は国内外のコンビニエンスストア事業(セブン-イレブン)が稼ぎ出しており、スーパーストア事業の営業利益率はコンビニ事業と比較して著しく低い状態が続いていました。事業分離の主な背景には以下の3つの冷徹な経営判断が存在します。
第一に、中間持株会社「ヨーク・ホールディングス」の設立を通じた外部資本の導入と、非中核事業のスピンオフによる資本効率(ROE・ROIC)の劇的な改善です。第二に、国内総合スーパー(GMS)業態の構造的赤字からの脱却と、アパレル事業撤退・食品集中戦略の完遂。そして第三に、買収提案に対抗するための「株主還元余力の創出」です。名門のプライドを捨ててでも、主力であるコンビニ事業のグローバル競争力を研ぎ澄ます決断が下されました。