ウェブ上の情報検索において根強く流布しているのが、「鮮血は危険だが、茶色い血や黒っぽい血は古い血の排出だから問題ない」という短絡的な俗説です。これは医学的に明白な誤認です。確かに茶色い出血は排出までに時間を要した古い血液ですが、その血液が「なぜ子宮内で生じたのか」という根本原因が解決されたわけではありません。子宮体がんの初期や、子宮内膜増殖症、慢性子宮内膜炎などでは、微量の出血が子宮内に滞留し、酸化して茶褐色のおりものとして排出され続けるケースが多数存在します。
また、「1回きりの出血なら様子を見てよい」という判断も注意を要します。性交直後に出血した後に止まった場合、子宮頸管ポリープが接触によって物理的に擦過されたか、子宮頸がんの初期病変部から出血した可能性が否定できません。「出血が止まったから治った」のではなく、「出血の原因となった病巣は依然として体内に残っている」と認識するのが正しい医療リテラシーです。
【プロの結論】受診を急ぐべき人・様子見でよい人の客観的判断基準
不正出血に直面した際、パニックに陥ることなく合理的に行動するための判断基準を提示します。自身の状態が以下のどちらに合致するかを冷静に照合してください。
【速やかに婦人科を受診すべきケース】
・少量の鮮血や茶色い出血が1週間以上ダラダラと続いている場合
・性交のたびに毎回出血が認められる場合
・閉経を迎えて1年以上経過した後に、微量であっても出血があった場合
・下腹部の鈍痛、発熱、悪臭を伴う膿のようなおりものを併発している場合
・過去1年以上、子宮頸がん検診を受けていない場合
【数日間の基礎体温・症状観察でよいケース】
・前回の生理開始日からちょうど12〜14日後前後で、痛みがなく1〜2日で完全に止まった場合(排卵期出血の疑い)
・低用量ピルを開始して1〜2ヶ月以内であり、飲み忘れがなく出血量がごく微量である場合
・妊娠の可能性があり、予定日頃にごく微量の出血が短時間だけ生じた場合(数日後に妊娠検査薬を使用)