不運の重なりを表す日本語には数多くのバリエーションが存在します。代表的なのが「泣き面に蜂」「弱り目に祟り目」「一難去ってまた一難」ですが、それぞれ発生のプロセスや被害の質において明確な使い分けが求められます。
もっとも混同されやすい泣き面に蜂との違いは、「一次被害の性質」と「時間差」にあります。「泣き面に蜂」は、すでに悲しい出来事や不幸があって泣いている(精神的・肉体的にダメージを受けている)人物に対し、追い討ちをかけるように別の災難(蜂に刺される)が襲いかかる状況を指します。元の不幸があってこその追い討ちという因果関係が強調されます。
一方、「踏んだり蹴ったり」は、最初の被害に傷つく間もなく、同等以上の打撃が間髪を入れずに浴びせられる「災難の集中砲火」を意味します。また、弱り目に祟り目は、運気が落ちて体勢が崩れている状態に怨霊の祟りのような不条理な災厄が重なるニュアンスを持ち、一難去ってまた一難は、ひとつの危機を辛うじて乗り越えた直後に新たな壁が立ちはだかる「波状攻撃」を意味します。
踏んだり蹴ったりの類語と言い換えとしては、上記のことわざのほかに「散々(さんざん)な目に遭う」「痛罵(つうば)を浴びる」「二重苦・三重苦に見舞われる」などの表現が挙げられます。状況の過酷さに応じて適切な語彙を選択することが、的確な描写への近道です。