事故による怪我で収入が途絶えた被害者にとって、「請求した休業補償はいつ口座に振り込まれるのか」というキャッシュフロー問題は死活問題です。住宅ローンの返済や日々の生活費が逼迫する中、保険会社からの入金スピードに関する正確な見通しを持っておく必要があります。
結論から言えば、休業損害は「必要書類が保険会社に不備なく到着してから、およそ1週間から2週間程度」で指定口座に着金するのが標準的なスケジュールです。ただし、これは相手方の任意保険会社が「一括対応(治療費や休業損害を窓口となって先行支払いするサービス)」を行っている場合に限られます。
重要な実務知識として、休業損害は「示談が成立する最後まで1円ももらえない」というものではありません。生活困窮を防ぐため、示談前であっても「1ヶ月ごとの区切りで分割請求(内払い・仮渡金の請求)」を行うことが損害保険実務の通例となっています。毎月、給与の締日を過ぎた段階で勤務先に前月分の休業実績を証明書に記入してもらい、速やかに相手方保険会社の担当者宛てに送付すれば、月給のように継続して休業補償を受け取ることが可能です。
送付先は、加害者本人ではなく、加害者が加入している「相手方任意保険会社の事故対応サービスセンター(担当事故係)」の原本必着窓口となります。送付する際は、後々の「届いていない」というトラブルを防止するため、特定記録郵便やレターパックなど追跡可能な手段を選択するのが賢明な防衛策です。
しかし、生活費が苦しいからといって、あるいは少しでも補償金を上乗せしたいという浅はかな意図から、事実と異なる記載を行うことは絶対にしてはなりません。休業損害証明書における虚偽記載は、極めて重篤な法的ペナルティを招きます。
「本当は出勤していたのに欠勤と偽る」「実際は半日勤務だったのに終日欠勤として処理する」「会社ぐるみの情実で給与支給額を水増しして記入する」といった行為は、保険会社に対する立派な「詐欺罪(刑法第246条・10年以下の懲役)」を構成します。損保各社の査定部門には元警察官や専門調査員(リサーチャー)が多数在籍しており、少しでも不自然な数字の動きがあれば、覆面調査や会社周辺の聞き込み、タイムカード原簿の開示請求を躊躇なく実行します。
不正が発覚した場合、保険会社から支払われた休業損害の即時全額返還が求められるだけでなく、年3%〜5%の遅延損害金が上乗せされます。当然ながら示談交渉は完全に決裂し、刑事告訴に踏み切られれば前科がつくことになります。それだけに留まらず、証明書に偽りの押印を行った会社側も詐欺の共同正犯や幇助犯に問われるリスクがあり、従業員本人も就業規則に基づく懲戒解雇処分を免れません。虚偽記載は文字通り、人生の破滅を招く禁忌であると認識すべきです。