ストリーミングサービスが音楽体験の標準となった今、音響の届き方は劇的に変わった。マイクの発達とデジタル配信技術の向上により、演奏者がステージ上で発する微細な息遣いや、ppp(ピアニシシモ)の中に潜む音色の濃淡までもがリスナーの耳元にダイレクトに届く。
この環境下において、演奏表現としてのdolceは新たな意味を持ち始めている。過度な装飾を削ぎ落とし、純度の高い音響を追求するアプローチが好まれる傾向にあるのだ。単に大音量で圧倒するのではなく、引き算の美学によって静寂を制する技術。現代のプロフェッショナルには、その繊細なチューニングが強く求められている。