失踪当日の夕刻、父親から警察へ寄せられた一本の通報から事態は動き始めました。当初、父親は警察に対して「山菜採りの最中に子どもとはぐれた」「目を離したわずか数分の間に姿が見えなくなった」と説明していました。しかし、捜索隊が現場周辺をいくら捜索しても男児の遺留品や足跡が一切見つからず、現場は緊迫した空気に包まれます。
捜査関係者の聞き取りが進む中で、父親の証言に重大な修正が入りました。実際には山菜採りではなく、「言うことを聞かない息子を戒めるため、山道で車から降ろし、約5分後に戻ったところ姿が消えていた」という事実が明らかになったのです。父親自身が「しつけのつもりで置き去りにしたと世間に知られれば激しい非難を浴びるのではないか」と恐怖し、最初の通報で虚偽の経緯を語ってしまったことが、捜査本部の初動配置にズレを生じさせる要因となりました。
小学5年生(10〜11歳)という年齢は、幼児と異なり自らの足で1時間に3〜4キロメートル以上移動できる基礎体力を備えています。日没が迫り気温が低下する中、軽装で所持金も携帯電話も持たない男児が、見知らぬ山林や複雑な路地でパニックに陥った場合、捜索隊の想定を超えるスピードで移動してしまうリスクがありました。父親の証言修正によって、捜索範囲は当初の数倍の半径へと一気に拡大されることになります。