家系図アプリを導入する動機として、「実家の遺産相続に備えたい」「亡くなった親の親族関係を整理しておきたい」という相談が法律相談現場でも増加しています。しかし、ここで絶対に混同してはならない重大な盲点があります。それは、「アプリで作った家系図」と「法的に有効な法定相続情報一覧図」は全くの別物であるという点です。
行政実務において、銀行預金の解約や不動産の相続登記を行う際、自作アプリの画面キャプチャや出力紙を持参しても公的な証明書としては受理されません。法的効力を持たせるには、被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍)の現物を収集し、法務局が規定する厳格な書式に則った「法定相続情報一覧図」を作成して認証を受ける必要があります。
ただし、家系図アプリが無駄というわけではありません。戸籍法改正による「戸籍謄本等の広域交付制度」の運用が定着した現在、本籍地以外の最寄り市区町村窓口でも先祖の戸籍が一括取得しやすくなりました。取り寄せた難解な古い戸籍(明治・大正期の毛筆体縦書き戸籍)を読み解き、親族の相関関係を頭の中で整理・可視化するための下書きツールとして、家系図アプリは極めて強力な武器となります。公的実務の前段階としての「道先案内人」として割り切って活用することが、失敗を防ぐ最大の知恵です。